松島みどり氏、小渕優子氏の問題について(その2)

 少し間が開きましたが、前回に引き続き、「政治と金」の話を続けます。

2.小渕優子氏の「観劇会」事件について
 この事件は、小渕優子氏の後援会である「小渕優子後援会」と、「自由民主党群馬県ふるさと振興支部」とが共催した東京・明治座に於ける「観劇会」について、2009(平成21)年度から2011(平成23)年度までの3年間の「政治資金収支報告書」で、参加者から徴収した参加費収入と、明治座に支払った代金支出との間に大きな食い違いがあり、2012(平成24)年度には、「観劇会」は開催されたものの、どの政治団体の収支報告書にも、その収入と支出とが一切記載されていなかったというものです。その後の報道では、2008(平成20)年度には小渕優子氏が代表を務める自由民主党小選挙区支部の「自由民主党群馬県第五選挙区支部」と、小渕優子氏の資金管理団体である「未来産業研究会」から、2009(平成21)年度には「未来産業研究会」から、それぞれ支出があったとされ、この差額の合計金額である約5,500万円分が、有権者に対する「利益供与」にあたるのではないか、という疑惑が持たれています。
 さて、まず整理しなければならないのは、小渕優子氏を巡る政治団体についてです。特定の衆議院議員(小選挙区選出)に関係する政治団体は、一般的には、資金管理団体である政治団体、後援会である政治団体、所属する政党の小選挙区支部の3つが存在するケースが多いと思われます。このうちの資金管理団体とは、当該政治家本人を代表者とする政治団体の一つを指定するものであり、政治家本人の政治活動に関する政治資金を取り扱わせる団体を指します。何人であっても、政治団体に対して寄附をする場合は、一つの政治団体に対しては年間150万円以内に制限されています。そのため、政治家が自己の後援団体に自己資金を入金する場合でも、年間150万円以内という制限が適用されます。また、政治家は、選挙前の一定期間(当該公職の任期満了の日の6か月前以降、又は衆議院解散の日の翌日以降、投票日までの間)、自己の後援団体に自己資金を入金することは禁止されています。しかし、これは、実情として非常に不便であるため、資金管理団体の指定をした政治団体についてのみ、これらの制限が外されるのです(ただし、個人が政治団体に対して1年間にすることができる寄附の総額は、政党への寄附を除き、政治家であっても1,000万円以内とされています。)。
 また、現在は、企業や労働組合等の団体からの寄附は、政党に対するものを除いて、認められていません。そのため、企業や団体からの寄附の受け皿として、政党の支部が利用されます。小選挙区から立候補する衆議院議員の候補者の場合は、その小選挙区の区域を単位とする支部を作ることが一般的です。どのような単位で支部を設立するかは、政党によって考え方が異なる模様です。因みに、私がかつて所属していた民主党では、党公認の国会議員(現職)及びその立候補予定者の選挙区と、党公認の都道府県議会議員(現職)の存在する区市町村にのみ、正式な支部の設立を認めていました。それに対して、自由民主党などは、もう少し弾力的な対応をしているようです。小渕優子氏の場合は、資金管理団体が「未来産業研究会」、後援会が「小渕優子後援会」、政党の小選挙区支部が「自由民主党群馬県第五選挙区支部」となっています。そして、それとは別に、小渕優子氏に関連する政党支部として「自由民主党群馬県ふるさと振興支部」が存在し、これら4つの政治団体が連携して小渕優子氏の政治活動を支えています。
 さて、今回は、これら4つの政治団体が、地元の支援者を対象とし明治座を借り切って開催した観劇会に関して、参加者から徴収した参加費として計上した収入の総額を、実際に明治座に支払った代金として計上した支出の総額が、合計で約5,500万円も上回った、とされています。もしそれが事実であるならば、参加者が本来支払うべき代金よりも少ない金額で観劇したということになり、その差額が、小渕優子陣営から有権者への「利益供与」に当たる恐れがあります。「事情通」と呼ばれる人の間からは、観劇会を企画したものの思うように参加者が集まらず、世襲三代目の小渕優子に恥をかかせないために、事務所が金を出して、各種業界に動員をかけただけ、とか、明治座の貸切条件を参加希望者だけでは充たせなかったため、差額を事務所で穴埋めしたのだ、といった解説がなされたりもしていますが、それにしても、実際の参加者である有権者が、明治座を貸切状態で観劇するということに要した費用の全額を負担していないのであれば、やはり「利益供与」を受けたと言わざるを得ません。
 さらに、この「観劇会」だけでなく、野球の観戦チケット代とか、贈答用ワインの代金、選挙区内の有権者への名入りカレンダーの配布といった支出もあるということで、こうなれば、もはや逃げられないと思います。小渕優子氏の選挙区は、父小渕恵三氏の中選挙区時代は、福田赳夫氏、中曽根康弘氏と、自民党内の有力議員がそろって「上州戦争(福中戦争)」と呼ばれたわが国でも有数の超激戦区であり、選挙違反を誘発しやすい土地柄でもあります。そういったこともあって、有権者への「サービス」が過熱したのではないかと思います。そのことは、事件のきっかけとなった政治資金収支報告書の作成担当者が、父小渕恵三氏時代からのベテラン秘書だったということを見ても推測できます。今回のように、イベントの支出が、参加料収入を大幅に上回ることが、公職選挙法違反に問われる可能性が高いことは、政治に関わっている人間にとっては、「イロハのイ」であり、気づかないはずがありません。しかも、正直な話、現在の政治資金規正法は全くのザル法ですから、現金で支払った参加者が多かったことにして、収入を水増ししてしまえば、収支報告書上問題になることは絶対にないのです(もちろん、犯罪行為ではありますよ。)。ですから、少しでも問題意識があれば、完全に隠すことができた事件なのです。それにもかかわらず、ある意味「馬鹿正直」に収支報告書を作ってしまったということは、いかに、小渕優子事務所のスタッフが選挙違反に慣れきってしまっていたか、ということを雄弁に物語っているのです。
 一部には、小渕優子氏が、原発の老朽炉の廃止判断を電力会社に求めたので、「原子力ムラ」によって排除された、などという人もいるようですが、それとこれとは、全く別の話だと思います。小渕優子氏は、「ゼロから出直す」と言っているようですが、この事件は、検察や裁判所がちゃんと仕事をすれば、間違いなく、議員失職と5年間の立候補禁止に該当する犯罪であり、本来であれば、小渕優子氏の政治生命の終わりとなるはずです。
 なお、この事件に関連して、国会議員関係政治団体の収支報告に係る監査のあり方が問題となっています。現在、国会議員関係政治団体が政治資金収支報告書を提出するにあたっては、政治資金適正化委員会が行なう政治資金監査に関する研修を修了し、登録政治資金監査人として登録された弁護士、公認会計士、又は税理士の監査を受けることが義務づけられています。しかしながら、この監査は、あくまでも、
1.会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かつた支出の明細書等及び振込明細書が保存されていること。
2.会計帳簿には当該国会議員関係政治団体に係るその年における支出の状況が記載されており、かつ、当該国会議員関係政治団体の会計責任者が当該会計帳簿を備えていること。
3.政治資金収支報告書は、会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かつた支出の明細書等及び振込明細書に基づいて支出の状況が表示されていること。
4.領収書等を徴し難かつた支出の明細書等は、会計帳簿に基づいて記載されていること。
についてだけ行なわれ、所定の研修もわずか3時間という短いものであるため、政治資金の取扱いが、公職選挙法や政治資金規正法に照らして適正であったかどうかまでをチェックするものではありません。特に、公認会計士さんや税理士さんについては、通常取り扱われている企業会計とは、そもそも会計の構造が違うということもあって、却って戸惑われることも多いようです。やはり、このあたりについても、実際に政治の現場に精通した者、例えば我々のように、政治団体や選挙の実務に精通した行政書士が、内容までチェックするような監査にする必要があるのではないかと思います。

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